ビースト・マスターはレンジャーのサブクラスの一つで、戦闘中や戦闘外で自分を助けてくれる1匹の動物の力を借りる者たちです。
彼らは文明と自然が融合したかのような、優れたチームワークを駆使して、ダンジョンの中を進んでいくでしょう。
しかし、残念なことに、このサブクラスはゲームデータ上の問題に悩まされています。
あなたの仲間のヒットポイントは可愛そうなほど小さく、アクションの効率性も悪くなってしまっています。
これを打破する方法はないのでしょうか?
本稿では、ターシャの万能釜本に記載されている改訂版ビースト・マスターにも触れていきたいと思います。さっそく見て行きましょう!
レンジャーの相棒
その野獣のAC、攻撃ロール、ダメージ・ロール、野獣が習熟しているセーヴィング・スロー、野獣が習熟している技能には、君の習熟ボーナスが加算される。
野獣の最大ヒットポイントは、本来の最大ヒットポイントか、君のレンジャーレベル*4のうち、より高い方になる。
その野獣の相棒は君の命令に可能な限り従い、イニシアチブは君と同じになる。
君は君のターンに野獣の相棒に言葉で移動の命令を下すことができる。
また、君は君のアクションを使い、言葉で相棒に攻撃、早足、離脱、援護アクションを命令することもできる。君が命令を下さなかったなら、相棒は回避アクションをとる。
君が”追加攻撃”の能力を得ているなら、野獣へ命令して攻撃アクションを行わせる際に、君自身も1回の武器攻撃を行える。
さらに君は得意な地形を野獣の相棒だけを連れて旅する場合、”隠密”を行いつつ通常の移動速度で移動できる。万が一相棒が死んだならば、君は8時間を費やして野獣との間に魔法の絆を結び、新たな相棒を得ることができる。
その野獣は君に対して敵対的でなく、かつ前述の条件に合わなければならない。
他のクリーチャーと同様、野獣の相棒もまた、小休憩でヒットダイスを消費し、ヒットポイントを回復できる。
君が無力状態であるか、君が野獣の相棒と離れているなら、野獣の相棒は自分自身の判断で行動し、君と自分自身を守ることに集中する。
野獣の相棒がリアクションを使用するのに命令は必要ない。
これはビースト・マスターの一番の魅力であり、そして一番の悲しい能力でもあります。
まず、エラッタを適用しましょう。野獣は何も指示しなくても、回避アクションを取るようになっています。(この記事本文はエラッタ適用文章を記載しています)
さて、中型以下で驚異度1/4以下の野獣はたくさんの選択肢がありますが、驚異度0の野獣は選ぶべきではありません。
野獣の相棒はビースト・マスターの重要なキーになっていますので、単なる偵察用の相棒を持つ余裕はありません。
小型サイズのクリーチャーであれば、いくつかの騎乗用として使うことができる野獣が良いでしょう。確実に騎乗用として使えそうなのはポニーです。
戦闘力と優秀なスカウト要員も兼ね備えていて欲しいなら、飛行でき、強力な毒と見えないものを見ることができるフライング・スネークや、鋭敏な感覚を持ち戦闘に役立つアビリティを持つウルフ、あとはジャイアントと名前がついているものはだいたい大丈夫でしょう。
さて、これには無数の問題点があります。これらの野獣は最大ヒットポイントが80です。Lv20で。
セーヴに習熟している野獣はおらず、つまりあなたの習熟ボーナスを足すこともできません。
ゲームの序盤、中盤、終盤のどこを切り取ったとしても、あなたの野獣は即座に倒されてしまう危険性を孕んでいます。
敵の放った範囲攻撃に巻き込まれて、ついでのように倒されてしまうこともあるでしょう。これはよくありませんし、耐久性を高める方法もほとんどありません。
一応、バーディングという野獣のための鎧のルールがあります。
これは重さは二倍、コストは四倍になりますが、野獣のACを上げることができます。
ただし、野獣はあらゆる鎧に習熟していないため、DMの温情によって、それらの鎧に習熟しているとしない限り、攻撃ロールや【筋力】【敏捷力】を用いた能力値判定、セーヴィング・スローに不利を受けることになるでしょう。
これによって、例えばチェイン・メイルを着たウルフなら、君の習熟ボーナスが+6になるころに、ACが22(外皮は鎧で上書きで計算)に到達するでしょう。
バーディングができるなら、ACはそれなりの値になりそうです。しかし、ヒットポイントとセーヴィングに問題を抱えたままであり、やはり前に立たせるには不安が残ります。
そして、あなたのアクションのためのリソースは、野獣に取られるため損なわれます。
勘違いしないで頂きたいのは、野獣の攻撃が弱いわけではないということです。
野獣の攻撃ロールとダメージ・ボーナスに、あなたの習熟ボーナスを足すことができるため、まずまずのダメージ効率を野獣は持っています。
しかし、同じぐらいのダメージをあなた自身が与えることができます。
つまり、野獣に攻撃を行わせるためにあなたの攻撃アクションを使う必要があり、これは差し引きプラスマイナス0ということです。
ウルフなど、一部の野獣は攻撃と同時に何らかの特殊効果が発動するものもあり、ほんの少しのメリットを提供するかもしれません。
しかしそれは…非常に些細な攻撃アクションの交換にしかなりません。
これらを統合すると、野獣の相棒は非常にユニークで、あなたのロールプレイに良い味付けを与えてくれるでしょう。
しかし、総合的な生存性の低さ、アクション効率の悪さに悩まされています。
ACはそれなりの値(あくまでもそれなりです。序盤は盾を持ったキャラクターの方が硬いでしょう)になる可能性があるため、デコイとして突っ込ませ、味方の攻撃を吸わせるという使い捨ての壁として使う活用法はあるでしょう。
しかしながら、召喚によって呼び出したクリーチャーと違い、野獣が死んでしまった場合、再度相棒を得るのはそれなりの手間がかかるのに加え、そもそもビースト・マスターのクラスとしてそのような行動はどうなのか?という疑問が残ります。
結局のところ、騎乗用にするか、壁にするか。もしくは完全に二人目の斥候として使い、戦闘には参加させないか。どちらにせよそのような使い方をするしかないでしょう。
さて、悲観的な話はここまでです。
実は、ビーストマスターの野獣の相棒は、問題があると判断されたのか、今後発売予定のターシャの万能釜本で大調整が入りました。“原初の相棒”と名前を変えたこの能力は、野獣の相棒を置き換え、まったく新しい能力としてビーストマスターに与えられています。
実際にターシャ本が出たら、この記事に追記をしたいと思いますが、具体的にどのように効果が変わるのかは以下の通りです。
・野獣は全てのデータから条件に合うものを選ばせるのではなく、”陸の獣””海の獣””空の獣”と名前が付けられた、全く新しい概念的な野獣データ・ブロックを使用する。この野獣データは君のレベルアップに従って強くなっていく。
・獣への命令はボーナス・アクションで行え、攻撃アクションや獣の持つ特殊行動も選択できる。
大まかにこんな内容になっています。明らかに強化されていますね。
ボーナス・アクションで野獣の攻撃ができるようになっている、蘇生が楽というのがキーポイントでしょう。
全ビースト・マスターはターシャ本環境を楽しみに待つ理由ができましたね!
しかし、現時点のレビュー記事はこのデータは関係ないものとして話を進めていきます!
高度訓練
加えて、野獣の相棒の攻撃は、“非魔法的な攻撃やダメージ”に対する“抵抗や完全耐性”を克服するに際しては魔法の武器として扱われる。
さて、またエラッタの時間です。エラッタによって野獣の攻撃は魔法的なものになりました!
非魔法的な攻撃はかなりの確率で抵抗されてしまうため、これはとてもありがたいことです。
あなたは野獣への命令に、攻撃でないならボーナス・アクションで指示を与えることができるようになりました。
もし騎乗しているなら、離脱や早足が簡単にできるようになるため、敵との距離調整が容易になり、遠近、両方の武器の使い勝手も大きく増すことでしょう。
援護アクションができるようになるのも大きいですね。これによって、ボーナス・アクションで動物が誰かの攻撃ロールを有利にしてくれます。
能力値判定への有利を得るための援護アクションとは異なり、味方の攻撃ロールを有利にするための戦闘中の援護アクションは、敵に向かって使用する必要があるため、野獣が接近する必要があります。
野獣が壁・もしくは騎乗時の離脱要員になってくれることを考えると、あなたは弓のような遠隔武器を使った方がいいかもしれません。
ボーナス・アクションはハンターズ・マークと競合していますが、これは必ず毎回使うわけではありません。
ハンターズ・マークを使わないタイミングで、この高度訓練の援護や離脱を差し込むのは良いアイデアでしょう。
野獣の怒り
これは…よくないことが書いてありますね。
この記述によると、その野獣がアクションとして、複数回攻撃を有していたとしても、このレベルからしか使うことはできないということです。
つまり、複数回攻撃のアクション内容を持つ野獣であっても、11レベルまでは単発の攻撃しかできないということです。
多くの場合、複数回攻撃アクションというのは、弱い攻撃と強い攻撃のコンビネーションから成り立っています。
だから、この能力を得て複数の攻撃ができるようになった場合、強い攻撃をただ2回行えばよいのです。複数回攻撃の出番はありません。
それはそれとして、あなたの野獣が与えるダメージポテンシャルが二倍になったということは間違いありません。
これらの攻撃ロールとダメージボーナスには両方とも、あなたの熟練度ボーナスが加算されます。
あなたの攻撃1回分とのバーターになることは変わっていませんが、魔法の武器などを使っていない限り、さすがにダメージ量も野獣が上回ってくるはずです。
呪文共有
レンジャーには良い自己バフがいくつかあります。
それらをかけたときに、呪文の効率を倍加させてくれます。
例えばプロテクション・フロム・ポイズン、プロテクション・フロム・エナジー、ストーンスキンなど。あなたと野獣の両方が、大きなダメージを受けたときに、キュア・ウーンズを二倍にできることも素晴らしいです。
残念ながら、PHB・ザナサー本環境ではダメージを与える効率を上げる目的での呪文は野獣への助けにはあまり向いていません。
例えばハンターズ・マークは敵にかける呪文のため、野獣に効果を適用することはできません。
エンスネアリング・ストライクやヘイル・オブ・ソーンズなどはかけることができますが、野獣は攻撃するために接近する必要があったり、ボーナス・アクションを使用する必要があるため、相性はイマイチです。
やはり、ターシャ本の環境下になりたいところです。
ターシャ本の環境下であるなら、レンジャー呪文にエイドやエレメンタル・ウェポンといった持続の長い有能なバフがさらに追加されるため、野獣と共に大きく強化されることでしょう。
ビースト・マスターに対する見解
PHB環境でのビースト・マスターは残念ながら他のサブクラスに比べあまり恵まれているとは言えないかもしれません。
動物の仲間は可愛く、素晴らしいロールプレイの時間がありますが、戦闘において彼らは乗騎か、レベル*4のヒットポイントを持つ肉の壁になってしまいます。
動物の戦闘能力が低いわけではありません。
むしろ、習熟ボーナスを攻撃ロールやダメージロールに足せるため、通常のキャラクターよりもダメージが出せるときもあります。
では何がよくないのかというと、基本的にキャラクターの攻撃アクションと野獣の攻撃アクションの等価交換になってしまっていて、メリットが少ないことと、ヒットポイントの低さと、相棒を肉壁として使い潰すことへの、彼らのクラスポリシーとの矛盾。そして死んでしまった場合再雇用の大変さです。
騎乗として使わない場合、肉壁として前に出すしかないが、打たれ弱く死んでしまった場合のリカバリーが難しい。攻撃力もあるように見えて、レンジャー自身の攻撃と交換のため実は総量として増えていない。
まとめるとこんなところです。
しかし、これらの評価はターシャの万能釜本が登場すると激変することになります。
死んでしまった場合の再召喚が容易になり、レンジャー自身の攻撃をしつつ野獣の攻撃もできるようになります。また有能なバフも増え、野獣がさらに強化されることになります。
我々が求めていたビースト・マスターはターシャ本から始まると言っても過言ではありません。
それ以前の環境で使うためには…かなりの愛と、DMによる慈悲が必要でしょう。
それでも、何度か言っておりますが、PHB環境でも敵の接近を阻む一時的な壁としては使えなくはないのです。
現状はかなり悲しみを背負ってしまっているクラスであり、あえて困難に挑戦したい人以外はやめておいた方がいいかもしれません。
ただし、ターシャ本が出てからは一流のサブクラスになるため、ターシャ本の登場を心待ちにしましょう。その際には記事も再執筆しますのでお楽しみに!
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